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No.12

つつい・やすたか
 1934年大阪府生まれ。SF黎明期の1960年にSF同人誌「NULL」を主宰。著作に「虚人たち」(泉鏡花文学賞)、「夢の木坂分岐点」(谷崎潤一郎賞)、「ヨッパ谷への降下」(川端康成文学賞)、「わたしのグランパ」(読売文学賞)など多数。俳優としても活動中。

「ブルータス」の「COFFEE AND CIGARETTES」特集

Go smokingの佐藤さんからの紹介で、映画の配給会社から劇場用パンフレットに映画評を書いてくれという原稿依頼があった。

映画というのは今話題のジム・ジャームッシュ監督「コーヒー&シガレッツ」である。説明を聞いたところではとてもいい映画のようだったし、見たいのは山山であったが、映画評とは言え劇場用のパンフレットに批判的な文章は書きにくく、まだ映画を見ていないとは言え、最初から批判を許されない原稿は宣伝文以外書かないことにしているので、せっかく佐藤氏のご紹介ではあったがお断りしてしまった。十万円も下さるというのに惜しかったが仕方がない。甚だ残念である。

前号の「ブルータス」では「COFFEE AND CIGARETTES」という特集を組んでいて、その中で麻生哲朗氏のこの映画に関するコラムが掲載されていた。それによれば、これはいくつかの短篇で構成されていて、いずれのエピソードもたわいのない会話が時間を潰すだけで、その中にコーヒーと煙草がただ存在しているというだけ、しかしもしそれがなければ冗長な記録にしかならなかった映画だと言う。そして退屈な人生をドラマチックにするのが、実はコーヒーと煙草なのではないかと結論している。

なるほどなあ。しかしコーヒーはともかく煙草の方は、嫌煙権運動との戦いによって結構ドラマチックになってきたのではないだろうか。われわれはこの煙草に関する過渡的な時代に喫煙者として生きてきたことによって他の連中よりドラマチックな人生を生きられるのだ。ありがたいことではないか。わははははは。

「ブルータス」のこの号には養老孟司さんの談話も載っている。もう何十年も前から知り合いの養老さんとは去年の十一月にも、これも何十年も前からの知り合いの文化庁長官、河合隼雄氏と三人で、小樽へ行って講演とディスカッションをしてきたばかりである。(このイベントの記録は「笑いの力」として岩波書店より三月に出版された)

養老さんがまだ東大の解剖学教室におられた頃だが、アメリカ製の、パッケージに骸骨の絵が大きく描かれ、「この煙草を喫うと死にます」と書かれた煙草を、骸骨と縁の深い養老さんに土産として持参したことがある。助手の男性が大笑いしていたが、養老さん自身は大の愛煙家である。

その養老さんは、煙草を喫えば肺癌になるという説は、疫学的データがすべて嘘であることが完全にばれてしまっていると言っていて、そもそもこの禁煙運動は何か他のものを隠すためのスケープゴートかもしれないとも言っている。例えばベトナム戦争で枯れ葉剤を使って、グリーンピースその他の批判が強くなると、ニクソンが命じて批判勢力を反捕鯨運動に誘導させたようなものではないかというのである。

他にもずいぶん示唆的な議論が提示されていて、一ページの記事ながらなかなか読みごたえのあるものだった。「ブルータス」もなかなかいい企画をするとは思ったが、できればこれくらい読みごたえのある記事があと三つ四つは欲しかったところである。

今月のお薦め

御影ガーデンシティの「西村屋 和楽」を褒めよう!

いつも東京の店ばかりなので、今回はぐっと西へ飛んで、阪急・御影駅前、深田池のほとりにある御影ガーデンシティ一階の「西村屋 和楽」をご紹介しよう。

実はその近くにある深田池に面したマンションの一室にわが仕事場があり、そこは書庫にもなっていて、仕事に必要な書物を取りに行くたび、この料理屋に立ち寄るのである。緑の芝生を見晴らす広い店で、昼食は午前十一時から午後二時まで、夕食は午後五時からでラストオーダーは九時半、午後五時までは和風甘味を中心にした喫茶もできる。もちろん、言うまでもなく全席喫煙自由である。

野菜、肉、魚介類と食材が豊富で、風変わりなひと皿百円台、千円台の一品料理が目移りするほど多くてしかも旨い。いつもこの一品料理を何種類か注文するのだが、コース料理もある。昼膳は千八百九十円、湯葉と豆腐の昼膳は二千六百五十円である。昼膳は弁当にして貰って持ち帰りもできる。夕食のコースは和膳が三千九百円、楽膳が五千二百五十円である。

この姉妹店の「花みかげ」という料理屋がこのガーデンシティの二階にあって、ここは会席専門である。最初のうちはそちらに通っていたのだが、新たにこの居心地の良い気楽な「和楽」ができて、最近はここにばかり通うようになった。酒も揃っていて、ワイン、焼酎、何でもありの店だ。阪神の人ならすぐれものの料理屋「西村屋 和楽」へ行こう!

尚、第七回で褒めた大丸東京店八階レストラン街の「椿山荘」であるが、なんとこの階全部が禁煙になってしまった。せっかくいい味の店だったのに、今後はもう行かないだろう。どこの店も禁煙になってからはほぼ40%客が減ると言われている。そうまでしての何ゆえの禁煙なのか、理解に苦しむところである。