special

No.12

つつい・やすたか
 1934年大阪府生まれ。SF黎明期の1960年にSF同人誌「NULL」を主宰。著作に「虚人たち」(泉鏡花文学賞)、「夢の木坂分岐点」(谷崎潤一郎賞)、「ヨッパ谷への降下」(川端康成文学賞)、「わたしのグランパ」(読売文学賞)など多数。俳優としても活動中。

禁煙すると差別主義者になるぞ。

NHK対朝日新聞の戦いでは、朝日の本田記者が録音したテープを公開しろ公開しないの議論になっている。恐らく本田は録音をしなかったのだと思う。彼がわが家にやって来たときは、録音などしなかった。だいたい彼の場合は、最初から書くことが決まっているので録音なんかする必要がないのである。記憶しているのは彼が小型カメラを持ち、おれが質問に困ったり、返事に困ったりしてなさけない顔をしている時を狙い、ぱちりぱちりと撮っていたことだけである。案の定、新聞にはそのなさけない顔の写真が出た。相当に悪質な記者だ。

この本田記者は有名人であったり政治家であったりすればもうそれだけで攻撃の対象にできると考えている。これは一種の差別にほかならないのだが、そもそもは彼自身が告白しているように、本来差別主義者であった彼がただ、差別する対象を変えたというだけのことなのである。

だいたい非差別者支援団体の人間たちはもともと差別主義者であった者が多く、その罪障意識から非差別者支援に走るわけであり、だからこの連中の糾弾は熾烈であり、極端でもある。そう言えばわが小説中のある部分を差別的であるとして部落解放同盟へ直訴に及んだスガという評論家(漢字がありません。シャケという字の魚偏を糸偏にした字です)も学生時代は極端な差別主義者であったらしい。

おやっ。このパターン、何かに似ているとは思いませんか。左様左様。禁煙した人間が喫煙者に対して極端に不寛容になるあのパターンと同じなのである。つまり禁煙によるストレスを嫌煙権運動によって発散させているわけで、わが周辺にもこういう者がしばしば見受けられる。後輩のSF作家で田中光二という男がいて、この男それまでははさっぱりとしたなかなかいい男だったのだが、喫煙すべきでない場所で煙草を喫っている人間を見かけると途端に口汚く罵りはじめるようになってしまった。三番館で映画を見ていて喫煙している者がいると「こらあ。やめろ。迷惑だ」と罵倒するのである。どちらが迷惑だかわかったものではない。

この男に限らず、喫煙している者の傍にやってきて罵るやつというのはたいていが以前喫煙していたやつであり、ヒステリックの度合いが高くて前後の見境いがない。こういう連中はあながち喫煙している者にのみヒステリックになるのではなく、日常のあらゆる場面で不寛容となるから注意しないととんでもない目に会わされることになる。

煙草を愛していた人間が禁煙すると、本人にとっても危険なことがいっぱいある。その第一は何といっても肥満であろう。食べものの味がわかるようになるのはいいのだが、禁煙したための口寂しさも手伝ってやたらに食うようになる。たちまち肥満し、禁煙のストレスも加わって心臓を悪くしてしまう。わが周辺にはそういう者が多い。社会的にも自身の健康のためにも、禁煙ほど害の多いものはない。賢明なる愛煙家の諸君は、くれぐれも禁煙などという愚行に走られることのなきよう、ここにしっかとご注意申しあげておく。

今月のお薦め

八角館ビル四階の中国家庭料理
「麺喰(めんくい)」を褒めよう!

明治通りと表参道の交差点に、昔、焼肉の「八角館」があった。それは今八角館ビルになっている。ここの四階、エレベーターを出てすぐ右の中国家庭料理の店「麺喰」はなかなかのすぐれものである。まず五十代以上の人が泣いて喜ぶインテリア(?)に驚くがこれは行って見てのお楽しみ。

店内はむろん喫煙自由。何を食べても旨くて安いが、店主のお薦めはまず豚の角煮八百五十円、そして麺類。例えばネギソバは八百四十円である。他にお薦めは豚の唐揚げ七百八十円、タコの唐揚げ七百五十円、エビのチャーハンが八百八十円、酢豚が千二百円である。酒は陳年紹興酒・古越龍山がグラス一杯六百円で飲める。坂本龍馬などという地ビールもあるぞ。

「文學界」のわが担当編集者にこの店を教えてやったら常連になってしまい店主とも仲良くなった。年中無休で昼は十一時半から四時まで、夜は六時から深夜十二時までやっている。まだ日本語のうまく話せないウエイトレスのお姐ちゃんも可愛いよ。

旨くて安くて一人でも気楽な「麺喰」へ行こう!