高森 幸祐
1980年代生まれの20代。
煙草への関心はものごころつく前からあるらしい。 「ピース」「ゴロワーズ」「ゴールデンバット」と、両切り煙草にとくにこだわりを持って喫煙しており、現在は専ら「バット党」。あこがれの煙草は両切りの「キャメル」。

去年か一昨年か忘れたが、インターネットのニュースである記事を読んだ。ドイツの会社で職業差別があったというのである。それは地元紙が報じたニュースで、愛煙家の社長が非喫煙者を意図的に採用しなかったことを伝えるものだった。嫌煙者の一方的な圧力のなか、同じ愛煙家として、いっそのことそうしてやりたいという衝動に駆られることは分からないでもないが、もちろんこれは就職差別である。嗜好の自由を謳う以上は非喫煙者が煙草を吸わない自由も認めるのが筋だろう。私は、また愛煙家が自分の首を絞めたのかと、落胆せざるを得なかった。

しかし、しばらく経ってその報道が捏造だったことが明らかになった。嫌煙者の記者が、嫌煙の風潮に迎合する記事を書いたということだろうか。これには憤慨を隠しえなかった。どう考えても現代の嫌煙ブームは異常である。新聞が嫌煙の宣伝に一役買っているというのは事実で、どこの国でも同じなのだという考えが私の頭に浮かんだ。最近、メディアリテラシーという言葉をよく耳にするようになったが、煙草に関してはどこの新聞を読んでも一向に愛煙家の声は聞こえてこない。聞こえてくるのは「煙草撲滅」を謳う極端な嫌煙者の声、といっても過言ではない。私は、戦時中の女性よろしく、「新聞恐怖症」になった。私は毎朝、新聞が届くと煙草の記事が載っていないか、恐る恐る見ている。特に禁煙デーの前後は憂鬱である。

しかし、それにも増して憤りを覚える記事が、今年(2011年)の1月15日にインターネットで流れた。

企業の人事担当者に調査したところ、「喫煙者は就職に不利」という結果が出たというのである。喫煙者に好感が持てるか、という質問に対し、人事担当者の56パーセントが「持てない」と回答、さらに「新卒採用時に喫煙が影響する可能性」について尋ねたところ、49パーセントが「ある」と答えたそうだ。また、「非喫煙者」を採用の基準にすることをどう思うかという質問したところ、「妥当」と答えた人は、85パーセント、自分の会社については、「採用基準にしてもよい」という人が、「考慮してもよい」という人を含め53パーセントで、「取り入れる必要はない」の44パーセントを上回った、と伝えている。

たしかに、仕事の性格上、煙草を吸えない業種が存在することは有りうる。しかし、それは特別な事情があってのみ許されることである。それがもし、雇用者の嗜好であったなら、許されるであろうか。喫煙所のコストという身勝手な理由ならどうだろうか。嫌煙の風潮に乗じて、ここまで許されてよいのだろうか。これは、立派な就職差別である。

しかし、この記事を何度も読み返しているうちに、私はさらに憤りを覚えたのである。

なんと、この調査を行ったのは「厚生労働省」なのだ。たしかに喫煙問題について調査するのは厚生労働省の仕事であるが、その一方でもうひとつ別の大きな仕事がある。雇用の不平等を是正するよう監督するのがこの省の仕事ではないか!この調査は一種の脅迫のようにも受け取れる。喫煙をあきらめなければ、パンを食うことすらできなくなるぞ、と言っているように思えてならないのだ。

この調査が雇用の平等を実現するための事実調査というのなら、話は分かる。私がこの短いニュースを読んだ限りでは、その真意の程は分からない。しかし今後、厚生労働省は、就職という、生きていくうえで最も大事な事柄において、ただ喫煙しているという理由で差別する企業に、是正を求める努力をしないつもりなのだろうか。だとしたら、喫煙者の人格は国家によって完全に否定され、見放されたのである。煙草は政府によって認められながらも、喫煙者は国家によって消されてゆくのである。もしそうだとしたら、このような事態をみなさんはどう思うだろうか。