高森 幸祐
1980年代生まれの20代。
煙草への関心はものごころつく前からあるらしい。 「ピース」「ゴロワーズ」「ゴールデンバット」と、両切り煙草にとくにこだわりを持って喫煙しており、現在は専ら「バット党」。あこがれの煙草は両切りの「キャメル」。

私は煙草を吸うとき、煙草を吸っている自分の理想の相手を求めたくなる。そして、自分が煙草を吸っていることを自覚するために、喫煙を盛り上げ、想像力を掻き立てるような演出を求める。そのための道具が煙草グッズである。

煙草グッズの蒐集家は、喫煙者、非喫煙者を問わず多くいるだろうから、私など遠く及ばない。蒐集家とは言えないけれど、私も煙草を吸う以上は充実した喫煙をするために道具にこだわりたいと思うのだ。

まずライターである。こだわっていると言う割には少ないと思われるだろうが、私のライターは三つだ。喫煙歴が浅いのと、金銭的な理由もある。ひとつは煙草を吸い始めたころに買ったジッポー、お値段たしか2000円である。当時学生だった私はそれでも大変勇気がいったのを覚えている。次に私が興味を覚えたのはライターではなくマッチだった。

ところがある日2本目のライターを買った。ロンソンのワンモーションライターである。骨董品屋で見つけたもので1930年代の代物だ。しかしこれはある意味で間違いだった。後で知ったのだが、ワンモーションライターは使い古されると摩耗して火がつかないらしいのだ。私は店員に誘われるままに買ってしまい、今では専ら鑑賞用となってしまった。

しかしロンソンのライターは魅力的だ。アメリカの合理的な発想から生まれたワンモーションライターはどこまでもシンプルな動きを追及している。シガレットはその本質からして、ワンモーションが似合う。そこで最近、新品のロンソンを買った。これが大変気に入っていて、手放せないようになった。

最初、煙草を吸っていると理想の相手を求めたくなると言った。女性でも男性でもかまわない。気に入った仲間と語り合いながら吸えるのが至福のひと時である。もちろん現実の相手がいることが何よりだが、残念ながら私の周りに喫煙者は実に少ない。バーやカフェでたまたま出会ったひとと煙草をきっかけに仲良くなることもあるが、それっきりというパターンがほとんどだ。そこで私はある「煙草グッズ」を無意識に探し出したのだ。それはいささか恥ずかしいことなのだが煙草を吸っている人物の映像や写真を鑑賞しながら自ら喫煙することであった。これは考えてみればそうと意識するずいぶん前、幼少の頃からしていることであった。ただ口にくわえるのが「煙草チョコレート」か本物の煙草かの違いがあるだけだ。

実は私が煙草を吸い始めたきっかけとなったのは1900年から1930年代へのあこがれからなのだが、そんな私にとって究極の「煙草グッズ」を最近購入した。それはたった500円で手に入った。インターネットで発見した1930年代のラッキーストライクの広告である。描かれているのはキャロル・ロンバードというパラマウントの女優で、ドレス姿で煙草をくゆらせ軽く腰かけている。ラッキーのパッケージは「緑地に赤丸」。Cigaretteという文字が下に大きく印刷されている。この意匠は7年ほど前に発売された復刻版、「ラッキーストライク1916」でご存じの方も多いだろう。

キャロル・ロンバードは家での喫煙のときの良きパートナーとなった。私は、グレン・ミラーやトミー・ドーシーの楽曲を聴きながら、ちょっぴり贅沢な自分だけの時間を、自己満足のちょっと恥ずかしい時間を、1930年に時が戻ったような気持ちで楽しんでいる。