個人サイト Otearai Web 作者 nagura
1974年京都府生まれ
平日はサラリーマンまがいの勤務をこなすかたわら、自サイトその他で腑抜けた駄文を連ねています。現在吸っているタバコはマイルドセブン(理由は安いから)。酒を飲むと気が大きくなってマルボロを買ってしまい、翌朝後悔することが多い。
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皆さま、明けましておめでとうございます。今年もたばこにまつわる各種よもやま話を連載させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

…というわけで本年の「初夢」にちょうどたばこが登場したので、他人の夢の話など退屈で仕方がないのが常ではありますが、今回は夢の話から始めさせてください。

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ぼくの初夢はどうやら近未来の世界を舞台にしていたようで、自動車が空中を駆けめぐり、人間個々人も背中についたブースターで移動するという、恥ずかしいくらいにベタなSFワールドが展開されていた。ただ、そんな近未来の世界もなにやら物騒で、無差別テロを繰りかえす犯罪者を捕まえるために、さながらゴレンジャーのような特殊隊員が街を警備し続けているのだった。

で、夢の中では友人A君もそんな特殊隊員のひとりで、A君ら仲間内数人で缶コーヒーを飲みつつ雑談しているという、すごいんだかすごくないんだかテンで分からないストーリー展開となっていた。そんな矢先のことである。

おもむろにたばこを吸おうとしたゴレンジャーのようなA君。しかしながら、あいにくライターを持ち合わせておらず、ぼくらに訊いてきた。
「ちょっとライター持ってるかな?」
そこでぼくらは我先にとばかりにライターを探しはじめ、髪の毛一本ほどの寸差でぼくが一番乗りでライターを差し出したところで、ガバッ! と目が覚めたのだった。

初夢の善し悪しが一年の幸先を占うなどとよく言われるけれど、今回の初夢は果たして善いのか悪いのか。自動車が宙を行き交ったり、特殊隊員がテロリストと戦ったりしている壮大な近未来ワールドに身をおきながらも、誰がライターを一番に出すかで必死になっていた自分の姿に軽いめまいを覚えつつ、新たな一年がスタートしたという次第。

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ただ、初夢に出てきたような「誰かに火を求められると妙にがんばってしまう習性」は、現実世界においても、ぼくだけではなく多くの人にあるような気がする。人の行動というのは基本的に支出(犠牲)と収入(報酬)の天秤によって決定されるところがあるけれど、ライターを貸すという行為は、「ガスがほんの少し減るだけ」という極めて小さな犠牲に対して「相手から感謝される」という比較的大きな報酬を得られるだけに、皆がこぞってやりたくなるのではないか。

ちなみにぼくは、ライターは貸すけれど、相手のたばこに火をつけることはまずない。僕自身たばこに火をつけられるのがどうにも苦手で、だからこそ相手のたばこに火をつけるなどいう真似は、悪魔のような極悪非道の所為だと思っているから。

これはどうしてかと言えば、上述の「支出と収入の天秤」の理屈がそのまま当てはまる。というのも、借りたライターで自ら火をつける行為にはわずかな労力しか要されない一方、もしも相手から火をつけてもらうとなると、着火しやすいようたばこの位置や角度に神経をすり減らさなければならないし、無事に火がついたあかつきには、何度も礼を述べながら会釈などもせねばなるまい。どう考えても収支が釣り合わないのだ。

明らかな上下関係にある人間同士であれば、こういった収支計算のかぎりではない。たとえば、後輩は先輩の奴隷みたいなものだという古風な体育会系クラブにおいては、ご主人様のたばこに奴隷が火をつけるのは当たり前の話であって、どちらにも損得は発生しない。たまに気が向いたご主人様からたばこに火をつけてもらった奴隷が、これ人生最高の光栄に存じますなどと大げさに恐縮しなくてはならないのも当然であって、ご主人様のほうだって自分のわずかな労力に対して多大な感謝が返ってくることを前提として、奴隷のたばこに火をつけてやっているわけである。これは言ってみれば力関係を再確認する作業であるから、通常の収支計算が成立しないのは自明だろう。

しかしながら、そうではない対等な人間関係においては、ライターを貸すくらいならまだしも、相手のたばこに火をつけるまでやってしまうと、その後の収支に甚大な歪みが生じてしまう。たかだか「たばこの火ひとつ」のために、罪もなき一般市民がどうしてここまで追いつめられなければならないのか? あまりの理不尽さに、考えれば考えるほど気が狂いそうになってくるのである。本来対等であるべき相手のたばこに平気で火をつけようとする人類、いったいどこまで愚かで恐ろしい生き物なのだろう。

…たかだか「たばこの火ひとつ」のために勝手な理屈をこねあげて、勝手に自分を追い込んでいるのはぼくだけでしょうか。ああ、ますます納得いきまへん!!